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「ジョイント・アカウント」を扱った判決事例

当事務所においてもコンサルの一つと考え、信託を活用しております。今回は信託財産に伴う税務処理より個人の確定申告等についてご紹介します。

事案の概要

  • 収益不動産をお持ちの方は、将来万が一認知症が発生した際や高齢により、自分で不動産の管理や修繕、売却を行うことが出来なくなってしまうリスクがあります。 そこで民事信託(家族信託)を活用することで、これらのリスクを未然に防ぎ、対応策を検討することが可能になります。
 

判決

「亡Aの相続については、法の適用に関する通則法36条により亡Aの本国である日本法が準拠法となるから、どのような財産が亡Aの相続財産となるかについては相続準拠法である日本法によって定められる。

他方、ある財産ないし権利が相続財産となるためには、相続の客体性、被相続性を有することが必要であるところ、相続の客体となり得るか否かは当該財産ないし権利の属性の問題であって、当該財産ないし権利に内在するものというべきであるから、法律行為の成立及び効力の問題として、通則法7条及び8条が定める準拠法によって判断されることになる。 本件預金契約では、預金口座は、預金口座が所在する地の法律により規律されるとの定めがあるから、本件預金に適用される個別準拠法はハワイ州法である。 本件預金が相続の客体となり得るか否かは、ハワイ州法によって判断すべきであり、相続の客体となり得ない場合には、本件預金が亡Aの相続財産を構成することはないものというべきである。」

「本件預金はジョイント・アカウントとして、亡A及び被告(後妻Y)が合有により所有していたものであり、日本法には同様の預金契約ないし共同名義人が合有により所有する預金債権はそもそも法制度として存在していないことから、本件預金が相続の客体となり得るか否かを判断するについては、ハワイ州法において、ジョイント・アカウントをどのような制度としてハワイ州法の法秩序全体が構成されているかに配慮しつつ検討すべきである。」

「ハワイ州法は、相続手続きのほかに、死亡を原因とする財産移転の制度としてジョイント・テナンシー(合有)の概念を持っているのであり、ジョイント・アカウントを含め、ジョイント・テナンシーにより財産を保有する場合に、単に二人以上の名前で保有することで足り、共同名義人の資格や親族関係の要件を必要としていないこと、共同名義人の一人の死亡により、生存名義人が自動的に死亡名義人の財産を所有するとされ、死亡名義人の遺産を構成しないことが明示されている上、遺言によって生存者権を変更することができないとされていることは、ジョイント・アカウントの死亡名義人の財産は、少なくとも死亡時においては、制度として定められた生存名義人が所有するという以外の財産の移転を予定していないものといえるのであり、他への一般的な移転可能性はないものと解されるから、ジョイント・アカウントは、共同名義人の死亡時においては、相続により移転することができず、他への一般的な移転可能性もない財産としてハワイ州が定めているものとの認めるのが相当である。」  

当事務所の見解

ジョイント・アカウントは、個別準拠法上、相続の客体とならないものとして、法秩序に組み込まれた制度であるというべきであり、本件預金は相続の客体となり得ないから、亡Aの相続財産を構成しないとXの請求を棄却しています。

税務上ですが、この事案のもともとの発端が「税務調査」でないかと考えられ、私法上相続性はないものの、税務上実質的に死因贈与契約による取得に該当するとして、課税対象になると管轄である渋谷税務署に指摘され、Yは修正申告をし、合計2171万円の納税をしています。 つまり相続税の課税対象に含まれる「みなし相続財産」にはなるが、遺産分割の対象となる「相続財産」にはならないということです。

法定相続人以外の方への財産移転の方法として有効かもしれません。(遺言と一緒だというご指摘はあるかと思いますが。)また、ジョイント・アカウントが特別受益に該当するか遺留分の算定基礎に含まれるかといった問題もあり、これらについては裁判例がなく後々争いが生じることも考えられます。

もともと亡Aが20年近くハワイ州に居住しており、ハワイ州に金融資産があるという目処はつきやすいですが、国外財産調書の提出等、以前にも増して税務署が国外の財産について目を光らせているのは事実だと思います。 今回の事例はハワイ州だったのでこのような扱いになりましたが、アメリカは州によって法律が定められており「ジョイント・アカウント」がすべてこの扱いになるとは限りませんのでご留意ください。

当事務所では、土地評価における考え方等のアドバイスや、
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