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配当金の考え方

いつも当レポートをご愛読頂き有難うございます。今回は収益不動産を複数所有する資産管理会社の株価対策を考える上での配当金の考え方について触れていきたいと思います。

配当金について

収益物件を複数所有する個人が所得税対策のために、資産管理会社を設立して、不動産保有法人への物件移転を進めていった際に、一定規模を超えてくると、資産管理会社の株価が問題になってくる場面が 生じます。その中で今回は比準要素対策としての配当金の問題点を一つ取り上げていきます。

非上場株式の株価を考える際に、無配当・赤字・純資産はプラス、という状態であれば、当該法人は比準要素数1の会社となり、通常に比べて評価額が高くなるケースが生じます。
そのため、これを回避するためには、利益を出すか配当を出すかの2択を検討することになりますが、株価の引き下げを考えていくのであれば、利益を出さずに、配当を出す方が合理的です。

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資本金      500万
資本剰余金    1億円
繰越利益剰余金 △300万
純資産の部  1億200万

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当事務所で実際にあった事例ですが、右のような会社を基に考えます(数字と事実関係は一部簡略化しておりますのでご了承ください)。

この場合、利益剰余金はマイナスですが、資本剰余金が高いため、純資産の部の金額は高く、株価も必然的に高くなっています。

今期の決算が赤字となった場合、比準要素数対策のために配当金を支払いたいが、配当原資となる利益剰余金がマイナスとなっており、そもそも配当金が支払えるのか、という点と仮にこの状態で支払った配当金は税務上どのように取り扱われるのか、という疑問について考えます。

ご存じの通り、比準要素の算定に使う配当金には資本剰余金からの配当金は除かれます。加えてこの場合に利益剰余金から支払われた配当金は会社法上の違法配当に該当します。

そのため、考えられる可能性として以下のパターンが考えられます。

⓵違法配当であっても利益剰余金からの配当として扱われる。
②違法配当のため資本剰余金からの配当として扱われる

また、上記のケースでは該当しませんが、仮に利益剰余金が50万の時に配当金を100万円支払った場合に、利益剰余金が△50万となるのか、資本剰余金9,950万及び利益剰余金0となるのか、といういわゆるプロラタ計算(資本と利益の配分)と判断されることはないのか、という点も疑問にはなりえます。

結論としては特に問題はないものと考えます。

違法配当については、会社法462条にて、違法配当を受けた株主、及び業務執行者が配当金額と同等の支払義務を会社と連帯して負うこと、同463条にて、配当金を受領した株主に対して、債権者は自己の債権額を限度として、金銭を支払わせることが可能になる(求償権の制限)旨がそれぞれ規定されています。(いずれも会社法461条1項にて規定される分配可能額が基礎となります)。

ここで、問題となる可能性があるとすれば、債権者が現に存するケース、又は会社と直接関係がない親族などが株主になっているケースです。現に上場企業ではしばしばこの違法配当を巡っての訴訟をニュース等で目にする機会があります。
ただし中小企業で実際に債権者が違法性を主張してくることは考えづらく、一般的には株主=代表取締役となっているケースが多いと思われますので、実務上の影響はあまり想定できません。また比準要素対策としての配当金は少額で済むケースが多く、影響はあくまで軽微なものと考えられます。

次に、税務上の取り扱いについてですが、違法配当であっても税法上の配当金に該当することは昭和35年10月7日最高裁の判決からも明らかにされています。では配当金の原資についてはどのように考えるべきなのでしょうか。

過去の判例から考えても配当原資の決定は、会社法・企業会計原則・法人税法の整合性が重視されるものと考えられまして、大前提となるのは、資本剰余金と利益剰余金の区別の原則です。また法人税法もこれと同様の扱いとなっております。具体的には、株主総会議事録・計算書類・支払調書などの書類を正しく整備しておき、利益剰余金からの配当である旨を明確にしておくことが、実に基本的な対応ですが、有効な手段と考えられるのです。

当事務所では、土地評価における考え方等のアドバイスや、規模格差補正率適用後の評価額が時価より高い場合等における時価申告による鑑定評価も行っております。お電話のほか、FAX、Eメールでのご相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。