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沖田オフィスレポート Vol.140

いつも当レポートをご愛読いただきありがとうございます。繁忙期も一段落を終えた時期かと存じますが、今回は非上場会社の株式を同族間で譲渡するときの価額・手続の方法について相談があったケースをご紹介いたします。

今回は、法人が所有する非上場会社の株式(同族株主には該当せず、少数株主の立場に該当します)を同族間で譲渡するときの価額の決定方法及びその手続についてご相談いただいたケースをご紹介いたします。

事案内容

当該法人は非上場会社の株式の3%を第三者割当増資で3年前に取得していました。この株式を法人から代表取締役である個人へ譲渡することとなった場合、いくつかの検討事項が発生しますが、まずは売買金額の検討が必要となります。前提としては法人から個人への譲渡になりますので、基本的には所得税基本通達59-6及び法人税基本通達9-1-13及び9-1-14を基に価額を検討することになります。

譲渡価額について

上記通達の取り扱いとして(紙面の都合上、詳細は割愛して記載します)

① 最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額(売買実例価額)
② 公開途上にあるものの公募価額
③ 類似会社の株式の価額
④ ①②③がない場合は、純資産価額等を参酌、または財産評価基本通達に基づき評価した価額

となっておりますが、②の価額を参考とするのは難しいため、①の適用がないかどうかを発行会社から可能な限り情報を得て検討することになります。

まず法人税基本通達9-1-13では、①の期間は当該事業年度終了の日前6月間となっておりますので、期間としては極めて限定的です。取得した時期が売買時期と近似する場合は、取得価額をそのまま使用するのも一つの方法とは考えられます。
ただし今回の事例では、法人が取得していたのは3年前であったため、さすがに当初取得した価額を使うのは難しいと考えます。それ以外の売買実例価額ですが、単なる譲渡以外にも、増資や自己株式の取得など、上記通達を利用するケースは複数ありますが、各取引が売買実例価額として使用可能かどうかの判断は難しく、参考事例としては以下の判決があります(東京地裁(平成21年9月17日判決)※TAINSコードZ259-11273)。当判決を踏まえると、増資(第三者割当増資に限ります)は売買実例としては使えないという見解ですが、前提として上記判決は第三者間取引による割当増資であり、価額の決定方法についても税法上の評価額はおそらく採用されておらず、同族間取引による増資であればまた異なる見解が生じていた可能性はあると考えます。
ちなみに株主間での取引(相続や贈与であれば特に影響はないのですが、株主間での売買があった場合など)は、純然たる第三者であれば価額に恣意的な要素が多く、同族間であれば上記通達の通りに評価がされている(されていない場合は課税リスクがある)ため、よほど近似した時期に異なる評価額が算出されるケースを除き、売買実例価額に影響を及ぼすものではないと考えられます。 ここまで確認を行ったとして結果的に①の価額を把握する(もしくは使用する)ことが難しいとなれば、自ずと④の価額を検討することになります(現実的にこのケースが最も多くなるはずです)。

ただし、当該株式が発行済株式総数の何%を所有しているかどうかで、原則的評価を使うのか配当還元価額を使うのか分かれることになります。そもそも3%であればほぼ間違いなく配当還元価額に該当すると考えられますが、仮に5%以上保有の場合では、株主名簿を確認しないと、他に中心的な同族株主がいるのかどうか、及び自己株式が発行されているのかどうかの確認が取れません。合わせて、法人税法第2条第16号に規定する資本金等の額が不明なため、上記の点を発行会社へ確認を取る必要が生じます。

ただ、配当還元価額で取引を行う場合、よほどの高配当会社でもない限り、当初の取得価額より低くなる可能性が高いです。友人知人から口約束で買ったにしろ、何らかのバリュエーション価額が算定されたにしても、さすがに配当還元方式より更に低い金額で第三者へ譲渡する(もしくは割当する)意味合いが薄いためです。そのため、このようなケースでは売却損が計上されるケースが多くなるため、ケースによっては売却損失の賞与認定を防止するための税務署への疎明資料という意味合いでも検討・準備をしておく必要があると考えます。

譲渡手続について

譲渡価額が決定したところで、実際の譲渡手続を取ることになりますが、この先は会社法上の手続となりますし、細かな違いは会社ごとに違うため、登記事項証明書等から把握できる部分より、一例を記載します。
まず登記事項から、株式の譲渡制限(非上場会社の場合、たいていは譲渡制限付株式と考えられます)の有無と、譲渡承認機関の確認は可能です。承認機関は株主総会か取締役会かによって、譲渡承認の議事録作成を依頼する必要もあります。合わせて株券発行会社かどうかで、実際の株券が手元にあるかどうかの確認をする必要もあります。基本的には、譲渡契約書も発行会社にて作成してもらう必要があると考えますが、仮に売買当事者間で契約書を作成するにしても、その内容を総会(役会)にて承認してもらうことになるため、発行会社へ確認の依頼が必要となります。

上記の通り、たとえ少数株主の立場であっても、登記事項証明書等から最低限必要な情報を入手した上で、発行会社に問い合わせをしながらでないと適正な評価額を出すことや、適正な移転手続ができないことになりますので、打ち合わせ等を重ねながら慎重に検討していくことが必要となります。
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