いつも当レポートをご愛読いただきありがとうございます。今回は「マンション売却時の税金について解説!計算方法や関連制度など」について触れてみたいと思います。
本記事では、マンション売却時にかかる税金の種類、計算方法、そして税金を軽減できる特例制度について詳しく解説します。
マンション売却時にかかる税金の種類
マンションを売却する際はさまざまな税金が生じます。ここでは税金の種類とその概要について、解説します。
譲渡所得税
譲渡所得税は、マンションの売却によって得た利益(譲渡益)に対してかかる税金です。譲渡所得は、売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に分類されます。【譲渡所得にかかる税金の税率】
所得税 | 住民税 | |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% |
このように、長期譲渡所得の方が税率が低いため、可能であれば5年以上所有してから売却する方が税金面では有利でしょう。
課税譲渡所得金額の算出
課税譲渡所得金額は、計算された譲渡所得から特別控除額を差し引いて求めます。最も一般的な特別控除は「3,000万円特別控除」です。3,000万円の特別控除については、追って詳しくお伝えします。
復興特別所得税
2013年から2037年までの期間、東日本大震災からの復興財源を確保するために課税される税金です。譲渡所得税額の2.1%が課税されます。
住民税
住民税は地方税で、譲渡所得に対して課税されます。先ほど触れたように、長期譲渡所得の場合は5%、短期譲渡所得の場合は9%の税率が適用されます。
その他関連税金
マンション売却時に直接かかる税金ではありませんが、取引に関連して以下の税金が発生します。- ・不動産取得税:不動産の取得に対して課される都道府県税
- ・登録免許税:不動産の所有権移転登記を行う際にかかる国税
これらは主に買主側が負担します。
マンション売却時の税金計算方法
税金の種類について理解したところで、税金の計算方法についてもみていきましょう。
譲渡所得の計算
譲渡所得は以下の式によって求められます。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
なお、取得費が不明な場合には譲渡価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」が使用可能です。
税額の計算
ここでは以下の条件における長期譲渡所得の計算例について、みていきましょう。- ・譲渡価額:5,000万円
- ・取得費:3,000万円
- ・譲渡費用:200万円
- ・特別控除:3,000万円
譲渡所得=5,000万円 – (3,000万円 + 200万円) = 1,800万円
課税譲渡所得金額 = 1,800万円 – 3,000万円 = 0円(特別控除額が譲渡所得を上回るため) この場合、課税される譲渡所得がゼロとなることから、譲渡所得税および住民税は発生しません。
マンション売却時に利用できる税金控除・特例
マンションの売却時にはさまざまな税金控除や特例が利用できます。ここでは代表的な制度や特例をいくつか紹介します。 マンションの売却を検討している場合には、ぜひ参考にしてみてください。
3,000万円特別控除
居住用財産を売却した場合、最大3,000万円まで譲渡所得から控除できる特例です。適用にあたっては、以下の条件を満たす必要があります。- ・売却する家屋に住民票があり、実際に1年以上住んでいること
- ・売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
たとえば、譲渡所得が4,000万円の場合、3,000万円を控除した1,000万円に対して課税されることになります。
参考:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
特定居住用財産の買換え特例
住んでいたマンションを売却し、新たに物件を購入する場合に利用できる特例です。譲渡所得の課税を繰り延べることができます。主な条件は以下の通りです。- ・売却した年の1月1日時点で居住期間が10年以上であること
- ・売却した年の前年または翌年に新しい住宅を取得すること
- ・新居の床面積が50㎡以上であること
この特例を使うと、新居の購入価格が旧居の売却価格以上の場合、譲渡所得への課税を全額繰り延べることができます。
参考:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
マンションを売却した際に損失が出た場合、その損失を他の所得と相殺したり、翌年以降に繰り越したりできる特例で、主な条件は以下の通りです。- ・売却した年の前年または前々年に、自己の居住の用に供していたこと
- ・譲渡契約締結の日の前日において所有期間が5年を超えていること
この特例を使うことで、マンション売却で生じた損失を給与所得などの他の所得から差し引くことができるほか、税負担を軽減できる可能性があります。
参考:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
その他の特例制度
- ・被相続人居住用家屋等の譲渡の特例:相続した実家を売却する際に使える特例
- ・空き家に係る譲渡所得の特別控除:相続した空き家を売却する際に使える特例
これらの特例は適用条件が複雑なため、専門家に相談することをおすすめします。
税金対策のポイント
マンション売却時の税金を最小限に抑えるためには、いくつかのポイントがあります。
長期保有
先述の通り、5年超の長期譲渡所得の方が税率が低くなります。可能であれば、購入から5年以上経過してから売却するのがよいでしょう。
売却時期の検討
年末に売却すると、その年の所得が高くなり、翌年の住民税が高額になる可能性があります。年始に売却することで、住民税の負担を1年先送りにできるケースがあります。
諸経費の把握
取得費や譲渡費用を正確に把握することで、譲渡所得を適切に計算できます。リフォーム費用なども取得費に含められる場合があるため、関連する領収書は大切に保管しておきましょう。
マンション売却を検討されている方へ
マンション売却時の税金は、譲渡所得税を中心に複数の税金が関係します。税額の計算は複雑ですが、さまざまな特例制度をうまく活用することができれば、税負担を軽減できる可能性があるでしょう。特に3,000万円特別控除や買換え特例は、多くの方に関係する重要な制度です。なお、税金の計算や特例の適用は複雑であり、個々の状況によって最適な方法は異なります。誤った判断により思わぬ税負担が生じる恐れもあるため、なるべく専門家へ相談するようにしましょう。
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