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固定資産の交換特例制度

いつも当レポートをご愛読いただき、ありがとうございます。今回は「固定資産の交換特例制度」の利用に当たって、不動産鑑定評価の活用が有効となる場合があることについて、お話させていただきます。

固定資産の交換の特例とは

まず、今回のテーマである「固定資産の交換の特例」についておさらいさせていただきます。

固定資産の交換の特例とは、「個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例」であり、特徴としましては、
①課税の免除ではなく繰り延べであること(交換取得資産の取得費は交換譲渡資産の取得費を引き継ぎます)、
②「居住用の買換え特例」や「特定事業用資産の買換え特例」と異なり、取得日も交換譲渡資産の取得日を引き継ぐこと、
③当事者間で合意された資産の価額が、交換に至った事情等に照らし合理的に算定されていると認められるときは、その合意された資産の価額によることができます。
この特例を受けるための適用要件として以下のものが定められています。
(1) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。

(2) 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。

(3) 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。

(4) 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。

(5) 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
この用途について、土地の場合は、宅地、田畑、山林、鉱泉地、池又は沼、牧場又は原野、その他に区分されています。
建物の場合は、居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用に区分されています。

(6) 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

注意事項

※1 雑種地と宅地を交換する場合には、地目が異なりますが、固定資産の交換の特例上、同一の地目扱いとなります。
※2 畑と雑種地(又は宅地)を交換する場合には、固定資産の交換の特例上、地目が異なると判断されます。この場合には、畑を雑種地(又は宅地)に地目変更した後に交換すれば、同一地目となり、固定資産の交換の特例の適用が可能となります。
※3 いずれも宅地であれば、交換譲渡資産が借地権で交換取得資産が底地であったとしても、資産の種類と用途が同一のものとなります。

前記要件のうち、(1)~(5)については、要件を充足するか否かについて、疑義の生ずる余地は少なく、あまり問題とはなりません。しかし、(6)の要件につきましては、「時価」がいくらなのかという問題が生じます。
そこで、交換前に不動産鑑定評価により、交換資産の時価を把握しておく事が有効になります。具体的には不動産鑑定評価を行うことにより、以下のようなメリットがあると考えられています。

税務署に対する交換の妥当性の検証

交換資産のいずれか高い方の100分の20を超えないことの判断を誤ると、特例の適用要件を満たさず、税務署から否認されるリスクがあります。特に親族間・法人とその役員間、同族会社の法人と代表者個人間の交換の場合等には税務上厳しくチェックされる傾向があるため、鑑定評価の必要性が高まります。

節税

所得税・法人税における時価は、路線価評価額ではなく、いわゆる売買時価を前提としています。
相続税の申告における路線価評価額が必ずしも不動産の売買時価水準を反映しないことは、過去のレポートでもお伝えしてきた通りですが、仮に交換資産の路線価評価額の金額差がいずれか高い方の100分の20の枠内に収まらない場合でも鑑定評価を行うことにより、求めた時価が 100 分の 20 以内に収まり、特例が認められるケースがあります。結果としてかなりの節税効果が得られることとなります。

公平な交換

不動産の鑑定評価を行い、交換資産の適正な時価を把握することで、当事者にとってより公平な交換が行えるようになります。特に、交換資産が大規模画地や不整形地等価値の把握が難しい物件である場合には、鑑定評価を行い、適正な時価水準で交換を行うことが、当事者の利益を守る意味でも有用となります。

将来の相続対策

相続人間の共有地について、各相続人が単独で利用処分できるように、土地の共有持分を固定資産の交換の特例を用いて移し、単独所有としておくことが有効となる場合があります。例えば、親子間の共有地が複数ある場合に、地積規模の大きな宅地の評価の適用ができる土地とそれ以外の土地で、鑑定評価を活用して持分を交換して、地積規模の大きな宅地の評価の適用ができる土地について、親の持分割合を多くする事により、時価と相続税評価額の開差を利用して土地の評価額を減少させる事ができます。

今回は、固定資産の交換特例にスポットを当ててお話させていただきましたが、例えば共有物の分割、相続税算定のための評価(路線価評価の適否、遺産分割など)、同族間・同族会社間の売買等における低額譲渡でないことの証明(土地、建物、借地権、底地)等においても、同様に不動産鑑定評価を活用することが有用となる場合があります。判断に迷われた際には、ぜひお気軽にご相談ください。