いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。第133回は、3月23日に発表になりました令和3年の「地価公示」についてご紹介したいと思います。コロナ禍の影響は用途や地域で異なる結果となりました。
令和3年地価公示結果の概要
1.令和3年地価公示結果の概要:新型コロナウイルス感染拡大で全国全用途平均の地価は6年ぶりの下落
国土交通省が3月23日に発表した令和3年1月1日時点の地価公示によると、全国平均では、全用途平均は平成27年以来6年ぶりに、住宅地は平成28年以来5年ぶりに、商業地は平成26年以来7年ぶりに下落に転じました。
三大都市圏においては、全用途平均・商業地は東京圏、大阪圏、名古屋圏のいずれも、平成25年以来8年ぶりに下落に転じました。住宅地は東京圏が平成25年以来8年ぶりに、大阪圏が平成26年以来7年ぶりに、名古屋圏が平成24年以来9年ぶりに下落に転じました。
また、地方圏をみますと、全用途平均・商業地は平成29年以来4年ぶりに、住宅地は平成30年以来3年ぶりに下落に転じました。地方四市(札幌市、仙台市、広島市及び福岡市)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、上昇を継続しましたが上昇率が縮小し、地方四市を除くその他の地域では全用途平均・住宅地は平成31年以来2年ぶりに、商業地は平成30年以来3年ぶりに下落に転じました。
新型コロナウイルス感染症の影響等により全体的に弱含みとなっていますが、地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なり、昨年からの変化は、用途別では商業地が住宅地より大きく、地域別では三大都市圏より地方圏が大きいという結果となりました。
推移
2.半年ごとの推移:令和2年前半は大きく下落も後半は横ばい・上昇へ
地価は調査期間の前半(R2.1.1~R2.6.30)に大きく下落するも、後半(R2.7.1~R2.12.31)は景気回復期待などから、住宅地ではわずかながら上昇に転じ、商業地では横ばいとなりました。
動向
3.住宅地及び商業地の動向
住宅地
全般的には、前半期を中心に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動の停滞や、将来的な雇用・所得に対する不透明感などから、需要が低迷していましたが、後半期は回復傾向となっています。
東京都では、東京都全域で対前年平均変動率が8年ぶりにマイナスとなり、23区全体では▲0.5%、港区、目黒区を除く21区で上昇から下落となりました。多摩地区全域では▲0.7%となりました。
埼玉県では、4年連続上昇から下落に転じました。さいたま市では▲0.7%、浦和区では上昇から横ばい、岩槻区では下落率が拡大、その他の8区は上昇から下落となりました。なお、川口市、蕨市、戸田市では、都心近接を背景に上昇が継続していますが、上昇率は縮小し、川越市、越谷市、所沢市など25市町で上昇又は横ばいから下落となりました。
商業地
入国制限や外出自粛に伴う国内外の来訪者減少等により、店舗の収益性低下、ホテル需要の減退が見られています。
東京都では、東京都全域で対前年平均変動率が8年ぶりにマイナスとなり、23区全体では▲2.1%、全ての区で上昇から下落となりました。多摩地区全域では▲1.1%となり、26市2町全てでマイナスとなりました。
埼玉県では、7年連続上昇から下落に転じました。さいたま市では▲1.0%、緑区が上昇から横ばいに、岩槻区が横ばいから下落となり、その他8区では上昇から下落となりました。なお、川口市、蕨市、戸田市では、上昇が継続していますが、上昇率は縮小し、川越市、越谷市、所沢市など24市町で上昇又は横ばいから下落となりました。
以上、コロナ禍で、都心繁華街や観光地を中心に商業地が大きく下落し、住宅地価も雇用環境の悪化などから下落に転じた一方、物流の増加で工業地価は引き続き上昇しています。地価の下落に伴い、納税資金調達のために売却した土地の価額が路線価方式による価格を下回ることも考えられ、このような場合には鑑定評価等によって算出した時価による更正の請求を検討すべきと思われます。