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特定物納が認められた事例

確定申告の時期で先生方におかれましても大変お忙しいかと存じますが、ご多忙の合間の息抜きに当レポートをお読みいただければ幸いです。 今年最初のレポートは、区画整理地内で、使用収益が開始されていない土地について、特定物納が認められた事例をご紹介します。

事例の概要

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被相続人 A
相続人  Aの妻B、子C・D(いずれも知的障害者)
相続財産 預貯金2000万円 土地・建物 4億2000万円
納税額  C:3200万円 D:3200万円

平成23年3月に相続が発生し、預金は妻B、土地・建物はB・C・Dの3名の共有により相続する内容で遺産分割及び申告が他の税理士事務所で済まされていました。
相続した土地は、1ヵ所を除き区画整理が施工中で、仮換地(区画整理施工後の土地)の使用収益が開始されていませんでした。使用収益が開始されていない土地は、相続税評価額よりかなり低い価額でしか買い手が現れなかったため、使用収益が開始されるまで一時的に延納を行っていました。 尚、妻Bも平成23年7月に死亡しています。

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相談の内容

「C・Dの生活費が毎月40万円程度必要であるにもかかわらず、収入はなく、売却予定の土地も区画整理の進捗が思うように進まないため、生活費の確保及び延納が厳しくなったため何か良い方法はないか」と平成29年にC・Dの後見人である司法書士の先生が当事務所に相談に来られました。

当事務所の対応

相談内容を考慮し、当事務所として下記のように国税局に主張しました。

主張① 相続人の生活費の確保

当事務所に相談に来られた時点で土地の一部で使用収益が開始されていたことから、当該土地を売却し、納税に充てるべきところ、土地の売却資金のほぼ全額をC・Dの当面の生活費として確保することを最優先にすること、さらに、延納の際の生活費の金額を通常の規定よりも多く認めてもらうことを交渉しました。

主張② 延納から物納へ

C・Dの生活費の確保を優先することにより、延納による納付の見込みがたたないことから、延納から物納に切り替える特定物納の交渉をしました。

結果

区画整理地内で仮換地の使用収益が開始されていない土地については、物納劣後財産(次頁、【物納劣後財産(抜粋)】参照)に該当し、原則として、他に適当な価額の財産(今回のケースでは、使用収益が開始されている土地)がある場合には、物納に充てることができない財産とされています。
 
また、土地を売却する予定がある場合には、物納申請時に添付する『金銭納付を困難とする理由書』の臨時的収入欄に記載する必要があります。当然、臨時的収入があれば、延納によって納付することができる金額が出来てしまい、物納許可限度額は減額されてしまいます。
交渉には1年程の時間を要しましたが、結果的に当事務所の主張①・②ともに認められ、物納劣後財産となる使用収益が開始されていない土地を物納することができました。

物納劣後財産(抜粋)

●法令の規定に違反して建築された建物及びその敷地
●土地区画整理事業が施工中で、仮換地の使用収益が開始されていない土地
●配偶者居住権の目的となっている建物及びその敷地
●工場等の維持又は管理に特殊技能を要する建物及びその敷地
●建築基準法上の道路に2m以上接していない土地
●開発許可を受けなければならない土地で、許可の基準等に適合しない土地
●市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
●過去に生じた事件又は事故等により、正常な取引が行われないおそれのある不動産
今回のケースのように、物納劣後財産に該当する場合でも、交渉次第では物納が認められる可能性もあります。また、当事務所では物納の検討と併せて鑑定評価による土地の時価を検討していますので下記のチェックシートをご活用いただき、一つでも該当する場合にはご相談ください。


【チェック項目】
□ 相続財産に、間口が狭い土地がある
□ 相続財産に、高低差のある土地がある
□ 相続財産に、区画整理中の土地がある
□ 相続財産に、他人に貸している土地がある
□ 相続財産に、狭小な土地や広大な土地がある
□ 相続財産に、持分の無い私道にしか接していない土地がある
□ 相続財産に、評価額より譲渡所得税を引いた後の手取り額が少ない金額でしか売却できない土地がある

上記以外にも、評価額に納得がいかない土地・時価と明らかに乖離している土地などがありましたら、お気軽にご相談ください。