いつも当レポートをご愛読いただきありがとうございます。今回は「不動産売却で税金がかからないケースって?控除・特例についても」について触れてみたいと思います。
本記事では、不動産売却時にかかる主な税金とその概要、かからないケースについて解説し、さらに節税に役立つ制度や特例について、わかりやすく解説します。
不動産売却時の税金について
不動産売却時にかかる税金として、以下があげられます。
① 登録免許税 | 不動産の登記を申請する際にかかる税金 |
② 印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙代 |
③ 所得税 | 不動産売却で出た利益に対してかかる税金 |
④ 住民税 | 不動産売却で出た利益に対してかかる税金 |
⑤ 復興特別所得税 | 令和19年まで所得税に上乗せされる税金 |
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、相続登記を行う際にかかる税金で、税率は登記原因によって以下のように定められています。
相続、合併:0.4%
遺贈、贈与:2%
売買等:2%(原則税率)
※出典:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
登録免許税の課税価格となる「不動産の価額」は市区町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格となります。市区町村役場で確認しましょう。仮に不動産の価額が4,000万円だった場合、登録免許税は以下のように求められます。
4,000万円×0.02=80万円
印紙税
印紙税とは「課税文書」に対して課される税金で、税額は売買代金に応じて2千円から10万円です。■印紙税の税額
契約金額 | 印紙税額 | 軽減税額※ |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書は軽減措置で税額が低くなります。詳しくは「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁」にてご確認ください。
印紙税は、売買契約書に必要な税額分の印紙を貼り、消印することで納税します。もし相続した不動産を3,000万円で売却した場合には、契約金額が3,000万円となるため、印紙税は2万円となります。(※軽減税率が適用されている期間であれば1万円)
譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税の税率は譲渡所得の15%または30%です。また、所有期間によっても以下のように異なります。■譲渡所得の税率
所有期間 | 所得税率 | |
長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
5年超 | 30% |
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
5年以下 | 15% |
※所有期間については不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断される
また、譲渡所得税は「譲渡所得」に対して課されます。譲渡所得の求め方は以下の通りです。
譲渡所得=譲渡収入金額ー(取得費+譲渡費用)
「譲渡収入金額」は売却して得たお金(不動産が売れた金額)です。「取得費」は不動産を取得するためにかかったお金を指し、買ったときの購入代金や購入手数料が該当します。建物は減価償却費相当額を差し引いた額で計算します。登録免許税も、取得費に含みます。「譲渡費用」は、不動産を売るためにかかったお金です。不動産会社に支払った仲介手数料や印紙税が含まれます。
住民税
住民税は譲渡所得の9%か5%です。こちらも所有期間に応じて以下のように税率が異なります。■住民税の税率
所有期間 | 住民税の税率 | |
長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
5年超 | 5% |
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
5年以下 | 9% |
※所有期間については不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断される
復興特別所得税
平成25年から令和19年まで東日本大震災の復興に対する財源確保を目的として「復興所得税」が所得税の2.1%上乗せされています。税率は譲渡所得の0.63%あるいは0.315%です。■復興特別所得税の税率
所有期間 | 復興所得税の税率 | |
長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
5年超 | 所得税率30%×2.1%=0.63% |
短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
5年以下 | 所得税率15%×2.1%=0.315% |
※所有期間については不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断される
不動産売却で税金がかからないケースとは?
不動産売却時にかかる譲渡所得税は、取得費・譲渡費用・特例控除などによって課税対象となる利益がゼロになれば発生しません。そのため、不動産売却で税金がかからないケースもありますので、不動産売却時に活用できる特例控除について、次の見出しで見ていきましょう。
不動産売却での税金の控除・特例について
不動産の売却などにより譲渡所得が生じた場合、以下の特例措置を活用することで、納税額を抑えることができます。
3,000万円特別控除
居住用財産を譲渡した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。要件として、以下の点が挙げられます。
・自分が住んでいる居住用財産を売却すること
・3年以内にマイホームの買い換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
・売り手と買い手が親子や夫婦等の関係でないこと
この特例を受けられれば、多額の譲渡所得がある場合でも節税が可能です。
軽減税率特例
10年超所有軽減税率の特例とは、10年超所有していた居住用不動産を売却した場合に、譲渡所得の税金(所得税・住民税)にかかる税率が低くなる特例のことです。譲渡所得にかかる譲渡所得税の内訳は「所得税」と「住民税」に分けられ、不動産の所有期間が5年という単位で、以下のように変化します。
5年以下:所得税が30%、住民税が9%
5年超:所得税が15%、住民税が5%
10年超:売却益が6,000万円以下の部分は所得税が10%、住民税が4%
10年超:売却益が6,000万円超えの部分は所得税が15%、住民税が5%
※所有期間は1月1日を基準として数える
居住用の不動産であることが前提条件ですが、不動産に住んでいない場合でも、その日から3年目の年末までに売れば特例の適用が認められます。なお、前年、前々年にこの特例を受けている場合には利用できない点に注意しましょう。この特例を利用することで、通常の場合よりも低い税率で長期譲渡所得の税額を計算できます。
買い換え特例
「買い替え特例」は、正式名称を「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。これは、自身の居住用財産を売却して新たな居住用財産を取得したとき、一定の要件を満たすことで譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる制度です。支出がかさむ買い換えのタイミングで負担を減らせることが、最大のメリットといえるでしょう。ただし、基本的に他の控除との併用ができない点には注意が必要です。
不動産売却で税金がかからないケースもある
不動産売却で利益が発生しなかった場合はもちろん、特例や控除を活用して課税所得がゼロとなった場合にも、税金はかからないのです。ただし諸経費の計算や、特例の適用要件に関する確認は専門的な知識が要求される場面も多く、税理士等に相談しながら進めることをおすすめします。
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